『猫を抱いて象と泳ぐ』
2009年2月3日(火) 『猫を抱いて象と泳ぐ』
小説家、小川洋子さんの新作『猫を抱いて象と泳ぐ』(2009年、文藝春秋刊)を読みました。
傑作だと思いました。敢えて言えば、後半やや重いかなという気もするのですが、それすら、主人公をいとおしむ気持ちがこちらにまで伝播していて、寧ろ自然な時の流れのようにも感じられます。この奇妙なタイトルも、読後は、これしかないという気までするのですから、本当に恐ろしい。虚空に新たな世界を創造する力は、まさに天才だと思いました。
読書の好みなどというものは、本当に人それぞれで、実は自分自身も、最も影響を受けた作家は小川さんかと言えば、それは違います。しかし、彼女の天才は、デビュー作『揚羽蝶が壊れる時』、芥川賞受賞作『妊娠カレンダー』以来、疑うべくもなく、本作では、完成の域に達しているようにすら思えます(でも、自分としては、少しは隙のある初期の『シュガータイム』が、彼女の作品の中では最も気に入っているのですが。)。
日本の文学賞は既にあらかた手にしたでしょうから、彼女には、日本人女性初のノーベル文学賞を獲ってほしいと思っています。その意味でも、彼女の本を訳せる力のある翻訳者の出現を願ってやみません。また、母国語で小川さんの小説を読める幸せも痛感しています。
だから本読みはやめられない、と思える素敵な読書体験でした。


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